耳口打出
世界でも類を見ない
鍛金技法の造形美
【 耳口打出 】
-みみくち うちだし-
この耳口打出湯沸の現存数は、
決して多くはない。
その理由は、制作にかかる
膨大な時間と限られた職人の
匠の技術によって、年間で、
数点しか作ることが出来ない
からである。
純銀製
清雅堂の「耳口打出」の技法は、長い間途絶えていたこの技術を独自の研究で復活、そして進化させた燕市「上彬」こと上野彬郎氏直伝によるもの。
純銀で作る耳口打出湯沸は、高貴な趣きと、とても柔らかな表情を生み出す。金属の中でも非常に高い熱伝導率を誇る純銀の湯沸かしは、芸術性と実用性を兼ね備えた逸品と言える。
進化する
多彩な造形美
銅製
「耳口打出湯沸」は1920年頃、燕市の職人 捧謙二郎氏(友来堂)の手によって初めて誕生した。捧氏はその他にも「口打出銀銅二重張湯沸」や銅の伝統発色技法など、現在も活用される多くの技法を確立した鎚起銅器界の第一人者である。
清雅堂が作る銅の「耳口打出湯沸」は、先人たちから伝承される幾つかの「銅錆の伝統発色」で仕上げられており、使い込み、長い年月を経ることで、錆色が徐々に移り変わり、深い趣きを得てゆく。
希少な伝統技法
革新する機能美
耳口打出の高度な技術
【絞り】
絞りとは、平らな金属板を金鎚と当て金を使い器状に成形する技法です。何十回も焼き鈍しと絞りを繰り返し、求める形に徐々に近づけます。「耳口打出湯沸」は、鉉(つる)取付け「耳」と注ぎ「口」までも一枚から打ち出した絞りの中でもとても高度な技術です。
【注ぎ口】
注ぎ口は、たくさんの金鎚と当て金を使い分けて作りこむ、最も時間のかかる工程です。胴体とのバランスを考え、注ぎ口の形や大きさを微調整します。
【耳】
耳は板厚が薄くならないよう気を付けながら、鉉(つる)を取付けるのに十分な高さになるまでじっくりと絞り出します。注ぎ口のみならず耳まで打ち出すこの技法は、類を見ない独特な作り方です。
【蓋】
蓋の作り方は幾つもありますが、清雅堂では一枚の平らな板から摘みを絞り出し、「下丈」という本体に納まる蓋脚のパーツと組み合わせて完成させる方法を採用することが多いです。
【鉉(つる)/取っ手】
鉉(つる)は、筒状に金属を巻き、木製の道具を使って少しずつ曲げながら慎重に形を整えます。完成時に本体の「耳」の穴にテンションをかけて鉉の鋲を差し込んで取付けます。
【バランス・中心軸】
手絞りの器は、プレスやスピニングの物と比べ、板厚が一定になると云われます。しかし、注ぎ口が飛び出た湯沸かしの作り方は、時に中心のバランスが崩れることも…。厚み・耳口の位置が正確に作られた湯沸かしは、水に浮かべたとき傾かずに真っ直ぐ浮くことができます。
【鎚目】
金鎚で打った痕跡を残し、それが幾つも重なることで生まれる鎚目の模様が湯沸かしの表情を作ります。鎚目肌の他に、金鎚や鏨(たがね)を使い分け、ご希望の表面仕上げも承ります。
【仕上げ】
素材の色のままから伝統的発色技法まで幾つかの選択肢があります。銀ならば、艶仕上げ・艶消し・硫化による黒色・煮色による薄灰色があります。銅には、紫金色・黄金色・宣徳燻しなどがあり、内側は錫引きを施します。
【取り扱い】
火鉢や囲炉裏で使うために作られてきた湯沸かしですが、コンロや電熱器でもご使用いただけます。使用後は乾布で撫でて水分をよく乾かしてください。直火により変色する場合があります。IHクッキングヒーターや電子レンジではご使用いただけません。空焚きは厳禁です。
【オーダーについて】
素材(銀か銅)、寸法、容量、模様、仕上げ等、ご希望に合わせてご注文一点ずつ制作致します。納期には通常3ヶ月~6ヵ月ほど要しますことをご了承下さい。